マスカケ線に願いを

「会いたかった……」

 切なくて甘い声でそんなことを言われて、私は心が締め付けられる。

「本当に、ごめんなさい」
「もう、いいだろ、謝るの」

 ユズがそう言って笑った。

「不安なら、そう口に出して言え。俺が不安なときは、きちんと伝えるから。泣きたいときは、泣けばいい。俺はちゃんと受け止めるから。だから一緒にいるからには、杏奈の全部を俺に見せて欲しい」

 そんな優しい言葉を送ってくれるユズに、独りよがりだった自分を恥じた。

 一人でも平気なくせに、独りだと寂しい。
 一人が楽なくせに、人の温もりを求めている。
 そんな面倒な私を、ユズが全部受け止めてくれている。
 この幸せを、私は手放しちゃいけないと思った。

「……私は、ユズなしでも大丈夫かな?」
「杏奈なら大丈夫」

 そう言ったユズは笑って、

「でも俺は怪しい」

 そう続けた。
 私はユズがするように、ユズの頬に触れた。

「私だって、怪しいよ」

 私はそっと、ユズにキスをした。

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