マスカケ線に願いを

「まあ、顧問弁護士の一人ってことだけど」
「あ、そうですか」

 企業の顧問弁護士となると、それこそ実績と経験のあるある程度年のいった弁護士がなるものだと思う。

「何の話?」

 小夜さんが小首をかしげた。

「さっき話してた会社の顧問弁護士が、コウだったらしいんですよ」
「あ、そうなの?」
「ここがどうかしたのか?」

 私はため息をついて、コウに事情を説明した。

「代表取締役、か。連絡しようか?」
「え、でも……とにかく高島君には連絡しようと思います」

 まさか下々の仕事を、代表取締役が把握してるとは思えないし。

「ああ。今日中に終わらせないと駄目なんだろう?」
「この会社が、ですけどね」

 私は早速高島君に電話をした。

「もしもし?」
『あ、大河原さん!』
「あの……」
『書類できた!? ごめん、ちょっと忙しいんだ!』

 工事現場かどこかにいるのか、高島君の声が騒音にかき消される。

「書類できた、って……まだ書類が届いてないんだけど!」
『え? ごめん! よく聞こえない!』
「印鑑証明書! 届いてないの!」

 私は騒音に負けじと叫んだ。
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