マスカケ線に願いを
「よし、これで終わり?」
「最終確認してきます」
長年住んだ部屋が空っぽになっている様子はやはり寂しい。
だけど、こうも思えた。
一人で頑張ってきた日々も、もう終わりだって。
忘れ物は、ない。
だから、私は管理人さんに鍵を返した。
「お世話になりました」
「大河原さん、お幸せにね」
私はぺこりと頭を下げて、ユズの運転する軽トラックの助手席に乗り込んだ。コウと小夜さんはバイクだ。
「よし、行くか」
「腰は大丈夫?」
「大丈夫だよ」
笑っているユズが車を発進させた。
「ふう、やっと終わった」
「さすがに疲れるな」
ユズが使っていなかった一室に私の荷物を入れて、冷蔵庫や洗濯機はユズの叔父さんが引き取ってくれることになった。
疲れ切った私達はリビングで四人してへばっていた。
「二人とも、晩御飯うちで食べてけよ。出前頼もうぜ」
「引っ越したから、おそばとか?」
ユズの言葉に、私が首をかしげる。だけどユズは首を横に振った。
「そばだったら労働力に見合わない! もっと重たいもん食べたい」
「それじゃあちょっと休憩してから考えよう。コウ、小夜さん、今日は手伝ってくれてありがとうございました」
私が笑いかけると、二人も嬉しそうに笑い返してくれた。