マスカケ線に願いを
ねえ、私のマスカケ線、私はこの手を離したくない。
ずっと、一緒にいられるかな。
これが、私のつかんだ幸せだと信じても、いいかな。
「杏奈」
「何?」
休日だというのに朝からどこかへ出かけていたユズが帰ってきたのは、昼前だった。
行き先は告げていかなかったので、私は留守番だった。
「これ」
「え?」
ユズがぽいっと何かを投げた。私は慌ててそれを受け止めた。
それは、包装された掌に収まるくらいの包装だった。
「……これ」
「開けてみな」
この大きさ、この形――中にあるものは、想像がつく。
私はらしくもなく震える手で、それを開けた。
「あ」
そこには、予想通りのものと、予想外のものが一緒に収まっていた。
「鍵?」
リボンのつけられたシルバーリングと、リボンのつけられた鍵。
「え?」
「うちの鍵、渡してなかっただろう?」
「あ」
そういえば、そうだった。
行き帰りがいつも一緒だったから気づかなかった。
指輪と鍵を眺めていた私を、ユズが抱き寄せた。