マスカケ線に願いを
「蓬弁護士、杏奈ちゃんにプロポーズするんですか?」
「こらこら、そこは二人の問題だろ」
そんな小夜さんを、ユズと一緒に現れたコウが注意した。
「だって今日、杏奈ちゃんずっと上の空なのよ?」
「あー、悪い。ちゃんと説明しなくてごめんな。ちゃんと夜、説明するから」
ユズが苦笑して私の頭をなでた。その手の感触に、浮ついていた心が少し落ち着く。
「でも、そんな緊張しなくても大丈夫だから」
「う……ん」
そんなに緊張しなくてもいいと言われても、やはり緊張する。付き合っていた人の親に会ったことなど、今までなかったし。
「とにかく仕事はちゃんとしろよ」
「わかってるわよ」
ユズにからかうように言われて、私はむきになって言い返した。
それから私は気を取り直して、きちんと割り当てられた仕事をこなした。
仕事が終わってユズの車に乗り込むと、ユズが口を開いた。
「今日は外で食べないか?」
「え、良いよ」
ということで、ユズが私を連れてきたのはお洒落なレストランだった。席についてオーダーをして、そこでユズが口を開いた。
「いきなり驚かせてごめんな」
「ううん」
「いや、実は俺のお袋が入院してるんだよ」
ユズの意外な言葉に、私は目を見開いた。
「入院って……」
「もともと身体が弱い人なんだけどな、最近年のせいか、体調を崩してて」
「そう、なの」
ユズはちょっと困ったように続けた。