マスカケ線に願いを
男と女が二人きり。
だけど、不思議とユズはそんな色を見せなかった。
「意外ですね」
「うん?」
「仕事ができる男は、性欲が盛んなんだと思ってました」
「おまっ……」
私の言葉に、ユズは腹を抱えて笑い出した。
その笑いが収まった頃、ユズが口を開く。
「俺だって男だから、そんな不純な気持ちがないとは言い切れないけれども」
「……あるんですか?」
「だけど、堕ちてる子猫を無理やりいたぶるような真似はしないぞ」
そんな妙なことで胸を張るユズが、可愛く思えた。
これで三十四才だというユズ。
子供のようで、しっかりしている人だ。
ユズは父性をも思わせるくらい穏やかな顔で、私を見る。
「良い子良い子しながら添い寝してやる」
私は微笑んだ。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
私はユズが食べ終わった食器を片付けていると、自室に入っていたユズがタオルを私の頭に乗せてきた。
「なんですか?」
「はい、これ」
私がタオルを手に取ると、今度は上下のスウェットを手渡される。
「下着はさすがにおいてないけど、簡単にシャワーでも浴びて来い」
私はまじまじとユズを見た。
珍しい人だと思った。