マスカケ線に願いを
「なんで?」
「なんでって……人の目がうるさいですから」
私はただでさえ目立っているらしいのに、こんな太陽のような人と一緒にいたら余計に注目を浴びてしまう。
「ふーん?」
そんな会話をしているうちに、食事が終わった。
ユズが食器を持って立ち上がろうとした。私はそれを制す。
「あ、ここは私が片付けておくので、準備しててください」
「ん? 本当か? ありがとう」
ユズが部屋に入ったのを見計らって、食器を片付ける。
ぼんやりとしながら、食器を洗い終わり、綺麗に乾かしてから食器棚に並べた。
そこでふうと一息をついて、辺りを見回した。
堕ちていた私の心を救ってくれたユズに、何かお礼がしたかった。
「……よし、掃除しよう」
私は袖を捲り上げた。
ごたごたと出しっぱなしになっていたものを片付けたり、整頓したりする。あとでユズに何をどこにしまったか、きちんと説明しなくちゃいけないと思いつつ、掃除に夢中になっていた私は、視線を感じて振り返った。
「きゃっ!」
私のすぐ後ろに、ワイシャツのボタンを留めながらユズが立っていた。
「な、なにやってるんですか! 驚かさないでくださいっ」
ユズは面白そうに、どこか照れくさそうに頬をかいた。
「いや、なんか杏奈、新妻みたいだから」
ユズの言葉に、私は唖然とする。
ユズは照れ隠しに笑う。