マスカケ線に願いを
「そうだな」
ユズは、にやっと挑発するように笑った。
「まずは、杏奈と友達になるところからだな。今は完全に俺は杏奈のストーカーなんでな」
ユズの言葉に、私は目を丸くした。
「自覚していたなら、良かったです」
ぽつんと洩れた私の言葉に、ユズは噴き出した。
「そこは否定しろよ」
「否定できませんので」
私は笑ってしまう。
ユズは不思議な人だ。
「それじゃあ、ゆっくり休め」
「送ってくれてありがとうございました」
「おう」
私はユズに頭を下げて車から降りた。
私の頑なな心の鎧に、するりともぐりこんでくる。
だけど私は、それをそっと避ける。
他人に、気を許しちゃいけないから。
ユズに気を許したら、自分が崩れてしまいそうで怖かった。