マスカケ線に願いを
『貴女の心を手に入れたい』
中に書かれていた文面を見て、私ははっとする。何がどうというわけでなく、ただ気味が悪い。
「なにこれ……」
こういうのには心当たりがあった。
ストーカーというやつだけど、そんなものが私に? でも、そんなことが本当にあるのだろうか?
首をひねりながら、私は便箋をかばんに入れた。今から部屋に戻っていたのでは、電車の時間に間に合わない。
私は早足で歩き出した。
『お昼、一緒にどう?』
久島弁護士のメールが来たのは、午前の業務がそろそろ終わりというときだった。
特に断る理由もなかったので、私は了承するメールを送った。
「よ」
「こんにちは」
三階の階段のところで、久島弁護士が待っていてくれた。
「屋上に行かないか? あそこなら人もいないし」
「屋上?」
この建物に、屋上なんてものが在ったのかと私は目を丸くした。
「あれ、知らなかった?」
笑いながら久島弁護士は階段を上る。そういえば、階段は最上階である三階で終わりではない。そんな単純なことに今頃気づいた。
「ま、皆忙しいから滅多に上がんないけどさ。立ち入り禁止ではないんだよ」
そう言って、階段の突き当たりにある扉を開いた久島弁護士。確かにそこには屋上が在った。