マスカケ線に願いを
ユズは本当に不思議だ。
こうして話しているだけで、肩の力が抜けるような気がするから。
『裁判、なんとか勝てた』
「本当ですか? 良かった」
『嘘言ってどうする』
話しているうちに、マンションについた。
『今、何してる?』
「マンションについたところです。あの、エレベーターに乗るんで、電話切りますね」
『わかった。すぐかけなおす』
かけなおすんだ、と思うと、ちょっと嬉しい。
「それじゃあ」
私は電話を切って、エレベーターに乗った。数分もかからず、目的の階につく。エレベーターから降りた瞬間、電話がかかってきたので私は吹き出した。
「もしもし?」
『おう』
「ユズは暇なんですか?」
『腹が減ってる』
「何か食べたらどうです」
『一人じゃ寂しい』
私は自分の部屋に入った。
「……今から晩御飯作りますけど、一緒に食べますか?」
『杏奈の部屋で?』
ユズの言葉に、はっと口を押さえる。
私、いったいなんて言った?
自分の言葉が信じられなくて、赤面した。