マスカケ線に願いを
「あ、あの……」
食材はここにあるし、一人より二人の方が食べるのは楽しい。
だけど今からユズのところに行くのは面倒だと思う。
うーん、と唸りながら、熟考した結果――。
「……ユズが良かったら」
『今すぐ行く!』
真っ赤になりながら、そう答えてしまっていた。
呼び鈴が鳴ったので、インターホンを確認すると、案の定ユズだった。
「今開けます」
私はユズを部屋に招き入れる。
「よ」
「こんばんは」
にっと笑ったユズは、いつものスーツ姿ではないせいか、別人のようにも思えた。
「いい匂いだ。何作ってたんだ?」
「簡単な野菜炒めですよ」
「美味そうだ」
私はユズをテーブルへと案内した。ユズは物珍しそうに、部屋を見回している。
「あんまりいろいろ見ないでください」
「やっぱ、女の子の部屋は違うな。華がある」
「そうですか?」
ユズはにこっと笑って椅子に座った。
「うわぁ、本当に美味そう」
「そんなに期待すると、食べたときにがっかりするかもしれませんよ」
そう言って、私も座った。