マスカケ線に願いを

「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」

 ユズはばくっと一口食べた。

「んまいっ」

 そう言って、もりもり食べ始めた。

 笑顔で、こんなに美味しそうに食べてもらえると、本当に作ったかいがある。
 嬉しくて、私も箸を進めた。

 本当に、ユズは不思議な人。
 一緒にいても、変に気を使わなくてもいい。
 一緒にいると、心を許しそうになってしまう。

「杏奈」
「え、はい?」
「どうした、ぼうっとして」

 食べ終わったユズが、私の顔を覗き込んでいた。

 どきっ……

 真面目な顔のユズと目が合って、不覚にも胸が高鳴ってしまう。

「そういえば、最近は堕ちてないのか?」
「え、あ、はい。お陰様で大丈夫です」

 少し赤くなった顔を隠すために、食器を持って立ち上がる。

「また食べに来てもいいか?」
「っ」

 ユズが自分の食器を持って、台所についてくる。

「ゆ、ユズは座っててください!」
「いや、俺が押しかけたんだし」
「ユズは裁判が終わったばかりで疲れてるでしょう」

 真っ赤になりながら、私はユズを追い返した。
 食器を片付け終わってリビングに戻ると、ユズはソファでくつろいでいた。
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