マスカケ線に願いを
「心配しなくてもそんなことしませんよ」
「いい子だ」
すっとユズの顔が近づいて、心臓が思い切り飛び跳ねた。
「じゃ、そろそろ帰るよ」
ユズは立ち上がっただけなのに、そんな一挙一動にどきどきしてしまう私がいる。
玄関までユズを見送る。ユズは私に微笑みかけた。
「晩飯、ありがとう。本当に美味しかった。出張から帰ってきたら、また一緒に食べても?」
「は、はい」
「よかった。それじゃあおやすみ。鍵ちゃんと掛けるんだぞ」
そうやって手を振るユズが、颯爽としていて格好良くて、しばらく私の心臓が鳴りやまなかった。
それに気づいたのは、また仕事場に出かける前だった。
「?」
また郵便受けに白い紙が挟まっている。
それを開いてみて、はっと息を呑んだ。
『昨日の男は誰? 貴女は俺のものなのに』
ぞくっ……
嫌な汗が背中を伝う。震える手で紙切れをかばんに入れて、事務所へと急いだ。
これはもしかして、本当にストーカーというやつなのだろうか。
昨日ユズが私の部屋に来たことを知っている。
気味が悪くて、吐き気がした。
事務所につくと、佐々木主任と目が合った。