マスカケ線に願いを
私は急いでエレベーターに乗り、自分の部屋に駆け込んで、すぐに鍵をかけた。
この紙を郵便受けに入れている人物は、私のことを知っている。
私の部屋の番号を、知っている。
「……っ」
気持ち悪くて、怖くなって、私は警察に電話をした。
「も、もしもし」
『はい、どうしました』
「ここ数日、変な手紙が郵便受けに入れられてるんです」
『あなたのお名前は?』
住所や手紙の内容など、電話越しに質問に答える。
『それでは、近くの交番の巡査に警戒を強めるように対処しておきます』
「……ありがとうございます」
私は、ソファに崩れ落ちた。
この電話の感触だと、警察は動かないだろう。
ふと、頭に浮かんだのは、ユズの顔だった。
だけど、ユズは明日出張に行くと言っていたし、迷惑は掛けられない。
「……どうしよう……」
今までの紙切れを、証拠としてとっておき、私は眠れない夜を過ごした。
翌朝、郵便受けの前を通るのが怖くてしり込みをする。
だけど、意を決して確認した。
また、紙切れが挟まっていた。
『貴女は俺だけのもの』
震える手で、紙切れをかばんに入れた。
いったい、誰がこんなことを?
私の知り合い?
誰かの悪ふざけ?
混乱して、泣きそうになる。
だけど、そんな自分に鞭を打って、私は仕事に向かった。