マスカケ線に願いを
「仲が良いというより、なにかと向こうから話しかけてくるんですけどね」
「本当に?」
「ええ」
岩山さんはくすくす笑う。
「美人は得だね」
と、少しも嫌らしい感じなしに言う。
それが意外で、とっさに反応できない。
「杏奈ちゃんって呼んでいい?」
「え」
「嫌ならいいよ」
にこにことそう言う岩山さん。どこか少女のようで、可愛い。
「良いですよ」
「それじゃあ杏奈ちゃんも、小夜でいいから」
岩山さんは小夜って名前だったなと、今更ながら思う。
「ところで、それは本当にラブレター?」
「あ、いいえ……」
自分でも声のトーンが下がってしまったのがわかった。
「どうしたの?」
「……郵便受けに、毎日こんな紙切れが入れられてるんです。誰がやってるかは、わからないんですけど」
私の言葉に、小夜さんははっと息を呑んだ。
「それって、ストーカー……?」
「まだ、わからないんですけど……たぶん」
まさか、この話を小夜さんにすることになるとは予想外だった。
「それ、危ないんじゃない? 杏奈ちゃんの家を知ってるってことでしょう?」
小夜さんの言葉に、私はうなずいた。