マスカケ線に願いを



 翌朝、郵便受けには何も入っていなかった。
 やはり、ストーカーも飽きたのだろうと、意気揚々と事務所に向かった。

「おはようございます」
「おはよう」

 いつも私の陰口を言っている人達にも、きちんと挨拶をする。

「ほんと、すましちゃって嫌な感じ」
「ストーカーされてるらしいわよ? どうにかなっちゃえば良いのにね」

 ずきんと、心が痛んだ。

 ストーカーの話をしたのは、きっと小夜さんだろう。ただの話のネタにしただけに違いない。
 けど、どれだけ私が嫌な思いをしているか少しも考えないような彼女達の陰口が、気に障った。


 なんで、こんなふうに陰口を言われなくちゃいけないのだろう。
 私は、ただ仕事をこなしているだけなのに。

 いけない、こういうふうに思うと……また堕ちてしまう。

 そのとき、携帯が震えた。
 確認すると、コウからのメールだった。

『お昼、一緒に食べない?』

 そういえば、前もユズがいないときに誘われたっけ。

『いいですよ』

 私はすぐに返信して、仕事に取り掛かった。


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