マスカケ線に願いを
第三条 揺れる心を射止めるべし
二人の距離
私のベッドは、ユズのうちにあるものみたいに大きくない。
ユズの部屋で一緒に寝たときは、ベッドに余裕があったから、一人で寝ているのと同じような感じだった。
私のベッドで一緒に寝るとなると、あのときのようには行かない。
「あの」
食事が終わって、私はユズに話しかけた。風呂上りでスウェットに着替えたユズは、やっぱり美味しそうに私の料理を平らげた。
「私お風呂に入ってくるけど、テレビでも見てる? それとも先に……」
「杏奈のこと待ってる」
「わかった」
自分の部屋に戻って、ベッドを見つめて考える。
ここに二人で寝るのは、無理があるんじゃないだろうか。
そんなことを考えながらも、ユズを待たせては悪いと思ってすぐにお風呂場に向かった。
お風呂から上がって、リビングを覗く。テレビの音が聞こえないことに気づいた。
「ユズ?」
返事がない。
私は濡れた髪をタオルで押さえながら、ソファに近づいた。
ユズは、ソファにもたれるようにして眠っていた。
「……」
出張帰りにまっすぐここに来たと言っていたから、きっと休む暇もなかったのだろう。悪いことをしてしまった。
こんなところで寝たら風邪を引いてしまうけど、私じゃ到底ユズは運べない。
私は起こしては悪いと思い、部屋から毛布を持ってきて、ユズにかけようとした。