マスカケ線に願いを

「あ、うん。でも、私のベッド、小さいよ」

 どきどきしながら、私はユズを寝室に案内した。
 ユズは物珍しそうに部屋を見回す。

「やっぱ女の子の部屋は違うな」
「そうかな?」

 とくに女の子しいものが置いてあるわけではないんだけれど。

「雰囲気とか」

 ユズはあくびをしながら、ベッドに座った。本当に疲れているんだろうな。

「ほら、杏奈は壁側。落っこちたら大変だろ」
「あ、うん……」

 どこかの乙女みたいに、ギクシャクしながら自分のベッドに入った。ユズが続いて隣に寝転がる。
 ユズがふっと笑って、私を抱きしめた。

「こういうのも、いいもんだな」
「何が?」

 私は、そっとユズの手に触れてみた。ぴくっと、ユズが反応する。

「あんまり俺をいじるなよ?そこまで図太い理性は持ってないからな」
「仕事ができる男は性欲多感だもんね」
「杏奈、あんまり挑発してくれるな」

 ユズが苦笑する。それが面白くて、私はユズの方に身体を向けた。すぐ近くに、ユズの顔がある。

「同じ匂いがする」

 私は、そっとユズの腕を抱きしめた。
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