トーカタウンの子供たち
「他の人間はどうでもいい、中央部を封鎖しろ」
アカツキから指示が飛ぶ。お前たちだけは逃がさないという気迫を感じる。

僕たちは足止めされてしまっていた。ミサキもサヤカちゃんも両手を握りあって少し震えている。タロちゃんはラルフさんと一緒にファイティングポーズをとっている。ハジメっちはアカツキと対峙しているアーサーさんとニコさんの動きを黙って見つめていた。

そんな時、空中からフワッと白いものが目の前に舞い降りた。
そしてこちらに振り向き(ニタァ)と笑う。

あの笑い方。紛れもない。でもなんでこんな時に。
「は、張り付き猫!」
つい大声を出してしまった。
「わいは張り付き猫なんてセンスない名前やないわ!ボケ!」
猫が喋った。
「嘘!?」
リンさんが目を見開いている。

「奴が現れたぞ、気をつけろ」
アカツキが叫ぶ。
「まずいな、はよ逃げな」
猫が喋っている。僕たちの驚きを無視して猫は喋り続けている。頭がおかしくなったわけじゃないようだ。みんなにも聞こえている。

武装集団が次々と集まってくる。

「まったく手間のかかるやっちゃな」
猫の体が脈打つようにうっすら光り始めた。コンピューターの基盤のように輝く模様が現れる。
すくっと猫が立ち上がり手を広げた。

すると黒いラビィたちが次々におかしな動きを始めた。うまく制御できなくなっているようだ。ラビィたちが武装集団の中に分け入り混乱させる。
「想定外だな…新型のファイヤーウォールが機能していない。捕獲班、何をしている」
アカツキの声に、次々とネットランチャーが撃ち込まれるがすべて動き回るラビィに引っ掛かる。

「はよついてこいや、トロいやっちゃな」
猫はこっちを振り返ると混乱する集団の中を駆け抜けた。
とにかく僕らは猫の後ろを無我夢中で走った。
「この猫、何者だぁ!?」
ラルフさんは驚きを隠せない。

猫が何回か発光し、あちこちの防火シャッターが開いたり閉じたりした。武装集団を妨害しているようだ。
気が付くとエントランスホールまで辿り着くことができた。
あと少しだ。
僕たちは駐車場になだれ込んだ。無事に逃げ出すことができたんだ。

テレビ放送が中断したことや、先に逃げた人たちが連絡したのだろう。すでに辺りは警察が包囲している。
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