トーカタウンの子供たち
張り付き猫はいなくなっていた。

ミサキとサヤカちゃんは地面に座り込んでいる。リンさんとラルフさんは警察に状況を話している。

夜のとばりが下りたスタジアムはひっそりと静まりかえっていた。

間もなくして軍の部隊も到着した。後で聞いた話だけど、彼らが突入した時にはすでに武装集団の姿はなく、そしてアーサーさんとニコさんも見つからなかった。武装集団の目立った痕跡は残っていなかったらしい。あれだけの設備があったのに映像すら残っていない。

スタジアムの観衆には大きな負傷者はいなかった。逃げるときに転んだりして軽い怪我をした人がいたくらいだった。
市長も無事に更衣室のロッカーから見つかった。

僕たちはそれぞれの家へと送り届けられた。さっきまでスタジアムへ向かう交通は遮断され誰も近づけなかったらしい。

(あの武装集団は何がしたかったのか)
(アーサーさんたちを誘拐するのが目的だったのか)
(それならなんでわざわざあんな時と場所を選んだのか)
(あの張り付き猫は?)
(アーサーさんたちはどこに?)

警察の車の中でぐるぐるといろんなことを考えていた。

玄関では母さんが抱きしめてきた。
「カズマ、大丈夫か」
父さんも急いで帰ったらしい。まだ作業着のままだ。クルミが足に抱きつく。少し泣いてくれたのかもしれない。目が赤くなっていた。

ハジメっちやタロちゃんともろくに話せずに帰宅してしまった。

明日、ふたりに会いに行こう。
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