トーカタウンの子供たち
第3章

ウラルの翼

「ニコ君はやはり参加してくれなかったか」
「彼には闘う理由がありませんから」
アーサーは答えた。ニコは今頃安全な地域に避難しているはずだ。

「わかった」
アカツキは部隊に移動の指示を出す。

「ブリーフィングで話したようにまずは大衆を煽動することが肝要だ。そのために放送局を押さえる。すでに先行した部隊からの連絡が途絶えているためにラビィを投入する」
アカツキが黒から新しく赤青白にカラーリングされたラビィから通信する。

市街に出てきたラビィを見て民衆が恐れて逃げまどう。放送局前の大きな交差点に出ると行く手を複数のラヴィに塞がれた。機体が青で統一されている。

青いラビィからひとりの男が飛び降りる。

「久しぶりだな。イヴァン。いや、今はアカツキだったか」
煙草に火をつける。髪を短く刈り上げている。年輩だが筋肉は隆々とし威圧感を放っている。

「アレクセイ大尉。なんでこんなところに」
アカツキの声に動揺が混じる。

「誰だ?」
アーサーにも只者でないことだけはわかる。

「彼らはウラルの翼。北の特殊部隊だ。普段は国の外で活動している。私もかつて一員だった」

「あんまり面倒を起こすなイヴァン」

「大尉は今のこの国の有り様をどう思われているのですか?人々は密告し合うように仕向けられ、萎縮しています。このままではこの国の未来はない」

「だからお前がやろうというのか。この馬鹿げた演劇を」

「私にはどうしても成し遂げなければならないのです。もう一度人々の笑顔を取り戻したい。私は祖国を愛している!」

「ふ、それならば仕方ないな」
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