トーカタウンの子供たち
「笑ったんだよ」
つい口を出してしまった。妹と母さんの話は長い。下手に入るとご飯も食べられなくなる。

「猫にも表情はあるとは思うけどねぇ」
「でもさ、立ったままニタァって笑ったんだよ」
僕も結局猫の真似をして立っていた。

「そんな猫がいたら面白いわね、猫又かしら」
「猫又って何?」
「猫の妖怪よ、何年も生きた猫がなるの!」
母さんは自慢気に話し始めている。

そんな母さんの後ろの窓にさっきからチラチラ白いものが揺れている。

すすきが風に揺れているような…
……尻尾?

(ニャッ!)

突然、猫が網戸に張り付いた。そして張り付きながら僕を見ている。あの猫だ!
そして(ニタァ)と笑った。確かに笑った。

呆気にとられて慌てて指差したときにはもういなくて、母さんは笑いながら食事の片付けを始め、クルミは窓を開けたり閉めたり外を見回していた。

母さんとクルミは気が付かなかったのか?網戸にあんなに激しく張り付いたのに!?

今度は部屋の窓にでも張り付かれるんだろうかと思うと、怖くなってきた。

今夜はなかなか眠れそうにない。
明日は大事な日なのに!
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