下剋上はサブリミナルに【BL】
というか、人としてそうするのが礼儀だろう。

就職したのに、いつまでもあのアパートに母親をタダで住まわせておくのは息子としてどうなんだって話になる。

オレの就職先によっては、もしかしたら東条家とは大分離れてしまうかもしれないけど。

通うのが大変だったら、その時はもう母ちゃんには家政婦はスッパリ辞めてもらっても良いしな。

社長達には、別の形できちんと恩返しさせてもらえば良い。


「おはよー」

「はよーっす」

始業時間が近づくにつれ、続々とクラスメート達が登校し、最初は閑散としていた教室にも活気が満ちて来た。

オレは窓辺から自分の机へと移動し腰掛ける。

口々に挨拶してくるクラスメートに適当に返事を返しつつ、左斜め前に座る斉藤をチラリと盗み見た。

着く早々、斉藤は小説らしきものを開き、熱心に読みふけっていたのだ。

教室で2人きりになった、オレとの会話を拒否するように、それは熱心にね。

ま、良いさ。

こんな思いをするのもあと1年ちょっとの辛抱。

頑張れ忍。

負けるな忍!

お前の名前は「堪え忍」の「忍」だ!!


未来への希望と野望を胸に抱きつつ、オレは一時間目の授業の準備を整えると、つかの間の安眠を貪る為に、机の上に突っ伏したのだった。
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