下剋上はサブリミナルに【BL】
『何だ?』と思っている間に、勇気はオレの手を取り、教室の後ろの掃除用具入れの近くまで誘導する。


「あのさ、言っていいか?」

「え?な、何?」


周りのクラスメートに聞こえないように配慮されたその声量に思わずドキリとした。


「お前さぁ、東条とツルんでても、あんまり楽しそうじゃないよな」

オレの鼓動は跳ね上がる。

「実は、あんまり、アイツのこと、好きじゃねーんじゃないの?」

な、何てするどいんだっ!

アイツが猫を被っているように、オレもとりあえず周りには仲の良い幼なじみに見えるように振る舞っているというのに。

つーか、今の段階ではそうしとかないと色々面倒だから。

だけど、見る奴から見たら、オレの全身からは嫌々オーラが溢れまくっているのだろうか?


「いくら雇主の息子だからって、そんなに気を使う必要ないんじゃねぇ?」

「勇気……」

「タダで住まわせてもらってるっていっても、それは雇用条件の一つで、しかもおばさんはそれなりの事をやってんだからさ、負い目を感じる必要なんてこれっぽっちもないだろ?」

「う、うん、でもな……」

アイツの命令に逆らえないという部分に関しては演技云々じゃなくて、パブロフの犬のように染み付いている習性のせいだから。
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