下剋上はサブリミナルに【BL】
だけど、勇気のこの言葉、気遣いは、オレにとってはとても有り難かった。

洸は半端なく目立つ存在で、そんなのと毎日一緒に登下校してるんだからオレが幼なじみというのは周囲には丸分かりだし、さらに、洸とオレん家の関係性も自然と知れ渡っていたりするんだけど、先ほどの斉藤みたいな捉らえ方をする奴の方が嫌でも浮き彫りになってしまって、自分には味方がいないんじゃなかろうかという錯覚に陥ってしまう事が多々あったのだ。

「って、当事者じゃないから好き勝手言えるんだよな。お前からしたら色々複雑だもんな」

オレの沈黙を何か違う風に受け取ったのか、勇気は右手を上げて後頭部をガシガシと掻きむしりつつ言葉を繋いだ。

「ま、もう少しの辛抱だから、頑張れよ。そんで一緒にキャンパスライフを楽しもうぜ」

「うん。ありがとう」


勇気とは同じ大学を受ける約束をしていた。

そして一緒に寮生活をしようと。

勇気とは高校に入ってから知り合ったんだけど、すごく気が合って、オレの中では今や一番の、真の親友だ。

洸をあっさり凌駕するほどの。

信頼関係が育つのに期間なんか関係ないんだよな。


オレは勇気に笑顔で手を振り別れ、教室を後にした。
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