下剋上はサブリミナルに【BL】
3
最近はめっきり陽が落ちるのが早くなった。
まだ17時を過ぎたばかりだというのに、辺りはすでに薄暗い。
風も冷たいし。
10月も中旬だしな。
この時期の空気の匂いを嗅ぐと、もの悲しいような、切ないような、何とも形容し難い独特の感情が押し寄せて来るんだよな。
さすが秋。
万人を感傷に浸らせる、オータムマジック。
「おい、ちょっとこれ持ってろ」
洸の買い物が済み、書店の自動ドアを抜けてふと空を見上げた所でそんなセンチメンタルな気分が押し寄せて来たんだけど、その小憎らしい声に現実に引き戻された。
「普通は言われる前に「持つよ」とか言うもんだろ。ったく気がきかねぇ」
……こいつといると日本の四季の美しさに思いを馳せている暇もありゃしねぇ。
だけど結局おれは洸の購入した参考書を受け取り(重!!何冊買ったんだよこいつ)財布をリュックへと仕舞いつつ歩き出した彼の後に続いた。
「何か飲んで帰るか」
同意を求めている風ではなく、もう決定事項として洸はそう呟くと、本屋の隣の、日本中いたる所に飛び火しているであろう某有名コーヒーショップの入口へと歩を進めた。
はいはい、もう、どこにでもお供しますよ……。