下剋上はサブリミナルに【BL】
当時の母ちゃんの年齢は29歳。

「まだまだ若い身空なのに、なぜ家政婦?」「他にもっと選択肢はあるんじゃないの?」と周りからは言われたらしいけど、母ちゃんはその仕事内容を聞いて即決してきたらしい。

何しろ、母ちゃんにとっては最高の条件だったから。

まず、その社長が大家をしているアパートが自宅に隣接していて、家政婦として雇われた暁には、そこにタダで入れてもらえるという条件。

まぁ社長からすれば隣に住んでくれれば通勤費を出さなくて済むし、気軽に早出残業が頼めるという計算が働いていたんだろうけど。

そして社長宅にはオレと同い年の男の子がいて、その子の遊び相手としてオレを職場に連れて来ても良い、という条件まで付いていた。

つまり、子どもをどこかに預ける必要はなく、目の届く範囲に置きながら仕事ができるという事だ。

幼い子どもを抱えたシングルマザーにとって、これほど好都合な条件は中々ないだろう。

仕事探しもさることながら、1歳半の子どもを預かってくれるような施設を探し出すのは結構大変な事で、しかも運良く見つかったとしてもそれなりの料金がかかるのだから。

提示された時給も普通のパートと比べたら断然良かったし、仕事と言っても、共働きで忙しい奥さんの手が届かない部分の補助的なものでそんなハードな内容では無いし。
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