下剋上はサブリミナルに【BL】
……仕方ねぇじゃん。


目の前の現実が厳しすぎて、ついつい別の世界に逃げ込んじまいたくなるんだよ。


気に入らないのならいつでも離れてくれて結構なんですけど?


「東条くん!」


その時、後ろからバタバタという足音と、聞き慣れた声がした。


もうその瞬間に気付いていたけど、振り返ると案の定、斉藤が廊下の向こうから駆けて来るのが見える。


「ちょっと、良い?2人だけで話があるんだけど」


洸の傍らまで近づくと、斉藤は息を乱しながら言葉を紡いだ。

オレの事はガン無視だ。


「え?今じゃなくちゃ、ダメかな」

「できれば」


字体は遠慮がちだが、実際の発音は力強く、有無を言わさぬ感じで斉藤はキッパリと言い切った。


「じゃあ、分かった」


洸はオレに視線を向けると爽やかに言い放った。


「そういう訳だから忍、先に帰ってて良いぞ」

「あ、うん」


2人は廊下を戻って行く。


先に帰っても良いって……。

そう言いながら、何か目つきが恐かったんですけど。

ホントに先に帰ったら、後でネチネチ嫌み言われるんじゃなかろうか。
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