下剋上はサブリミナルに【BL】
かといって、ここで立ち尽くしている所を斉藤に見られたりしたら、何かますます心証悪くなりそうだよな。

仕方ない。

水飲んだり、トイレ入ったりして時間潰すか。

それでも戻ってこないようだったら、仕方ないから先に帰ろう。

バイト遅れちゃうしな。


それなら、後で洸に何か言われても堂々と言い返せる。


つーか、何でオレがここまで気を使わなくちゃいけないんだろ?


理不尽な思いを抱きつつ、とりあえずオレは昇降口から一番近い男子トイレを目指した。


「前に東条くん、言ったよね」


この角を曲がれば目的地、という所まで来た所で、その声は聞こえて来た。


「今はまだ女の子と付き合っているより、友達と遊んでいた方がいいって」

「うん」

「その考えは今でも変わらない?私のこと、そういう対象として、見てもらえないのかな?」


オレは心底仰天した。

恐る恐る壁から目だけ覗かせると、男子トイレよりさらに奥の、非常階段に続くドアの前で、洸と斉藤が向かい合って立っているのが見える。


「ごめん。今はまだ考えられない」

「じゃあ、いつになったらその気になるの?」

「いや、そんな事、今聞かれても……」
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