下剋上はサブリミナルに【BL】

｢父親がいないから愛情に飢えてるのかもしれないけど、だからって東条くんに依存するのは止めてもらいたいわ｣


その言葉に、一瞬目の前が暗くなる。


オレ、別に、そんなつもりは……。


そりゃもちろん、今まで一度も母子家庭という事に寂しさを感じなかった訳じゃない。


でも、母ちゃんが一人二役をこなしてくれてたし、社長とか奥さんとか近所の人とか周りには親切な人ばかりだし、友達にだって恵まれたし。

洸だって、そういう寂しさを感じさせる暇もないほどオレを振り回してくれたという点では役に立ってるし、自分ではそんなにウジウジと思い悩んだ記憶はない。


それなのに、周りからはそんな風に見られていたんだろか？

深い付き合いなどしていない赤の他人に、こんな事まで、言われなくちゃいけないのか？


涙腺がじんわり熱くなって、徐々に視界が揺らいで来た。


やば、と思い、慌てて右手の甲で目元を拭っていると、洸が静かに口を開いた。


｢そんなこと、君に言われる筋合いないから｣


地の底を這うような、暗く冷たいその声音に、鼓動がドキリと跳ね上がる。


｢忍は俺の親友だから。あいつを侮辱するってことは俺を侮辱してるってことと、同じだよ｣

｢え。わ、私、そんなつもりじゃ……｣