下剋上はサブリミナルに【BL】
斉藤は慌てたように、しどろもどろに返答している。


無理もない。

こんなに怒りをあらわにした洸を見た事などなかっただろうから。


「すごく最悪な考え方だね」


今度は彼女の息を呑む気配が伝わって来た。


「君の告白断って良かったよ。そしてこれからも、未来永劫付き合う事はないから。君みたいなひねくれた見方をする女の子に全く魅力なんか感じないし」


というか、オレだって、こんな洸は知らない。


「人のこと卑屈だの何だの言う前に、自分の厚顔無恥さに早く気付いた方がいいんじゃないの?」

「ひ、ひど……」


涙声でそう言葉を発すると、斉藤はその場から突然駆け出した。


ヤバイ!と思ったけど、当然逃げる暇などない。

とりあえず体を横にスライドさせて壁に張り付いたので正面衝突は避けられたけど、泣きながら角を曲がって来た斉藤と、しっかりばっちり視線がからみ合ってしまった。


一瞬目を見開いた斉藤は、次の瞬間すごい形相でオレを睨みつけ、そのまま走り去った。


「そこにいるんだろ?忍」


先ほどよりも、大分穏やかな声で、洸がオレを呼んだ。


「逃げても無駄だぞ。早く来い」


気付いてやがったのか……。
< 31 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop