下剋上はサブリミナルに【BL】
気まずい思いを抱きつつ、オレはおずおずと洸に近づいて行く。


「あれで隠れてたつもりかよ。バレバレだっつーの」


洸はいつもの尊大な態度、口調でオレを見下ろして来た。


「い、良いのか?あんな事言っちゃって」


オレは先ほどの洸の言動についてさっそくツッコミを入れる。

つーかそれを言わずにいられるか。


猫を被る事に命をかけている奴なのに、あんな本性をさらけ出しちまうなんて。


「相手が失礼な事を言って来たのに、こちらが遜る必要はない。俺が紳士に振る舞うのはあくまでもメリットがある相手だけだ。嫌われても良い、どうでも良い奴にまで気を使う必要はない」


……つ、強い……。


洸のその思想に、オレは不本意にも清々しいものを感じてしまった。


オレもそういう性格だったなら、いちいち落ち込む事もなく毎日をエンジョイできるんだろうけど。


「何か、悪いな。オレのせいで……」


我ながら歯切れの悪い口調で呟く。


「まさか洸がそこまでオレのこと思っていてくれてたとは知らなくて、正直今までちょっと誤解してたっつーか」

「は?何言ってんだ?」


予想外の展開に、戸惑いと、何とも言えないくすぐったさを感じつつ言葉を発していたオレを、洸はいともたやすく切り捨てた。
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