下剋上はサブリミナルに【BL】
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「遅い!」
人ん家の玄関ドアを勝手に開け放ち、その戸口で腕を組み、オレを睨みつけながら、洸は言葉を発した。
オレ達親子が住むこのアパートは単身者、もしくは若夫婦向けの造りなので大変コンパクトで、玄関入ってすぐにダイニングキッチンがあり、そこで朝食を摂っていたオレは隠れる間もなくしっかりばっちり来訪者に見つかってしまった。
「え……。つーか、母ちゃんもう行ったけど」
オレは、口に含んでいたトーストを急いで飲み下してから物申した。
朝食は奥さんが作るけど、その後片付けを任されているので、家の用事を済ませたら母ちゃんは毎朝すぐに社長宅に向かっている。
今日も、オレが起きた時にはすでに出勤していた。
「おばさんじゃなくて、お前の方だ。何ちんたら朝メシ食ってんだ。遅刻するだろうが」
「は?いや、だって、まだ7:40だけど……」
オレはテレビ画面に表示されている時間をチラッと見ながら返答する。
家から学校までは自転車で約20分。
この後身支度を整えたりする時間を入れても、始業時間までにはまだまだ余裕があるじゃないか。
「何言ってんだ。俺は今日委員会があるって言っただろ。いつもより30分早く行かなくちゃいけないんだぞ」