下剋上はサブリミナルに【BL】
いずれにしろ、貯金があるのと無いのとでは、大学に入ってからの生活に雲泥の差が出てくるのだ。


だから今、オレがやっている事は決して無駄ではない。


バイトする時間を勉強にあてた方が良いだろうかと考えた事もあったけれど、今の勉強量でも充分合格圏内だしとりあえずは金を貯める方を優先する事にした。


ラストスパートで頑張ればさらにライバルとの差は縮まるハズ。


小さい時の、少ないお小遣いをやりくりして貯金に回していたオレの頑張りも評価してやらなくちゃな。


「忍~ご飯冷めちゃうよ~。早く来な~」


ちょっぴりナルシストチックにそんな事を考えていたら、ダイニングから母ちゃんの呼ぶ声が。


オレなんかより何倍も苦労して、亡き夫を思い、陰で涙を流して来たであろう、母ちゃんの声。


そんな波瀾万丈な人生を送っている事など微塵も感じさせない明るく力強いその声に、何だか胸が締め付けられて、またもや涙腺がやばくなった。


「今いくよ~」


慌てて右手の甲で目尻を拭い、通帳を仕舞うと、大好きな母ちゃんの、愛情溢れる、最上級にうまい料理にありつく為に、オレは急いでダイニングへと向かった。
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