下剋上はサブリミナルに【BL】
「東条には俺が伝えといてやるから……」


勇気の言葉の途中で、保健室の戸が勢い良くガラリと開く。


その人物を視界に捉らえた瞬間、オレは思わずポカンとしてしまった。


戸口には、若干息を乱した洸が立っていたからだ。


「え?ど、どうしたんだ?」

「お前が怪我したの、教室の窓から見えたから」


言いながら、洸は足早に近づいて来る。


そして、勇気に視線を合わせた。


「えっと……北野君だよね?ありがとう。忍の面倒見てくれて」

「いや……」

「後は大丈夫だから。俺が一緒に帰るし」


そしてオレに視線を移す。


「掃除当番だから、それが終わったらすぐ来る。昇降口で待ってて」

「あ~…でもオレ、タクシーで帰るつもりなんだけど…」

「え?そんなにヒドイのか?」

「足首がちょっと」


洸は包帯で巻かれたオレの足首をじっと見つめたあと、おもむろに口を開いた。


「じゃあ俺も一緒にタクシーで帰るよ。どっちみち、それが到着するまで時間かかるだろ?待っててくれ」

「あ~、うん…」


言いたい事だけ言って、洸は足早に去って行った。


入れ違いに保健室の掃除当番が現れ、必然的にオレ達もそこから追い出される。
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