下剋上はサブリミナルに【BL】
重病人だったらベッドに寝かせといてもらえたかもしれないけどただの捻挫だし、しかも何だか湿布を貼って包帯で固定したらだんだん痛みが引いて来てしまった。


それでも「無理はしない方がいい」という勇気のアドバイスの元、彼に肩を借りつつ事務室まで行き、職員さんにタクシーを呼んでもらった。


「じゃあ俺、行くわ」

「うん」


昇降口まで来た所で、勇気が言葉を発する。


勇気も掃除当番なんだけど、オレの世話をする為に途中参加という事にしてもらったらしい。


このまま時間を潰して終わった頃に何食わぬ顔で戻るという手もあるけど、勇気はそういう姑息な事はしない男だ。


しかし彼は数歩歩いた所でふと立ち止まり、振り向きつつ呟いた。


「なんかさ~…」

「ん?」


彼にしては歯切れの悪い物言いに、戸惑いつつ先を促す。


「なんだよ」

「さっき俺、アイツにすごい目で睨まれたんだけど」

「え?アイツって?」

「この話の流れならアイツに決まってるだろ。東条洸」


不機嫌そうな口調で勇気は続けた。


「俺とお前が仲良いのが気にいらねぇ~ってのが丸分かりの態度でさ。アイツ、相当お前に執着してるぜ」

「え」
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