下剋上はサブリミナルに【BL】
とにかく、洸が勇気に対していつものアイツらしからぬ態度を取ったのはそういう背景があっての事だ。


自分の思い通りにならないと気が済まない奴だからな。


たいして気に入ってなくてぞんざいに扱っていたおもちゃでも、他人が楽しそうに遊んでいたら癇癪起こして取り戻す子どもみたいに。


そんな訳で、ついうっかり自分の地を出してしまったのだろう。


オレは一人納得しつつ、下駄箱に近づいた。


『あ、この足じゃ、靴履けねぇかな』とか考えながら蓋を開けたオレは、中を見てあれ?と思う。


通学用のローファーが無い。


この学校には登下校の際は必ず制服を着用し、靴は黒か茶の学生靴を使用すること、という校則があり、当然オレも守っていた。


ちなみに体育の授業では学校指定の運動靴を履く。


つまり、上履きは今履いているから、本当なら運動靴とローファーが鎮座している筈なのに、下駄箱内部には運動靴しか見当たらなかった。


「あ、西島」


ぼんやりとその場に立ち尽くしていたオレは、背後から聞こえた声にハッと我に返る。


「さっきはごめんな~。大丈夫だったか?」


4組の山本だ。


今だ体操服のままという事は、きっと運動部に所属していて、この後部活に行くのだろう。
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