下剋上はサブリミナルに【BL】
「や、やめろっ」


意外にも、洸はすんなりと唇を解放した。


だけど、いつの間にかオレの腰に巻きつけられていたその両腕はガッチリと後ろで組まれ、離れる気配はない。


「い、嫌がらせにも程があるだろ!!」

「嫌がらせだと?」


オレの抗議に、洸はとてつもなく不機嫌な表情になった。


その口元にふと目が止まり、『あ、コイツ、口の端切れてる…』などと今更ながらに気がつく。


そういえば、オレの口の中も何か鉄臭い。


「何で好きな奴にキスするのが嫌がらせなんだ」


そんな風に考え事をしていたので、その言葉を理解するまでにタイムラグが生じた。


「……好きな奴って、誰が?」

「お前の事に決まってるだろう」

「へ!?」

「好きだから今までずっと一緒にいたんだろうが」

「嘘だ!」


オレは自信満々に、間髪入れずに答えた。


「今までずっとオレのこといじめて来たくせに!」

「そんなの愛情の裏返しに決まってんだろ」

「ト、トロイだのなんだの散々馬鹿にしてきたくせに」

「それは本当の事なんだから仕方ないじゃないか」

「なんだとぉ~!」
< 62 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop