下剋上はサブリミナルに【BL】
まずい!

梅塩を間違えた!


今まで人に命令なんかした事なかったから。


でも、一瞬だったけど、オレ、コイツより優位に立ったよな。


切なすぎる刹那だったけども。


こういうのを、サブリミナルのごとく、ちょいちょい日常の中に挟んで行けば、いつか完全にオレが主導権を握る日が来るかもしれない。


まさかの下剋上だ。


「……悪かったな。通帳破っちまって」


洸はようやくオレから離れると、屈み込み、元通帳だった紙片を拾い始めた。


「ああ……。いや、良いよ。再発行してもらえるだろうし」


2人きりの時に、こんなに素直に謝られた事なんか無かったので、くすぐったい思いを抱きつつ、オレもしゃがみ込む。


ホラ、早速良い感じに、効果が出てきたじゃないか。


紙片を拾い集めたところで、どちらかともなく視線が絡み合った。


すると洸は、いつものような嫌味な感じではなく、とてもナチュラルに、ちょっぴり無邪気に、オレに微笑みかけてくるではないか。


何だかとても嬉しくなって、オレも、おそらくコイツには今まで見せた事のない、心からの、最上級の笑顔を、お返ししたのであった。
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