アンダーサイカ
店中に溢れた卵たちは一通りの挨拶を済ませると、次に戸棚という戸棚を飛び回り、陳列された品物を興味深げに見始めた。
【ナンダコレ!ナンダコレ!】
【スゲー!スゲー!】
愉快だな。
ポカンと見つめる私。そんな私をよそに、ヨシヤはテキパキと接客を始めた。
赤い壷を勧めたり、黄色い粉の説明をしたり。
薬に詳しくない私は手持ち無沙汰に、卵たちが手に取って眺めた品物を片っ端から整頓する。
その際、
【オイ、オイ!オマエ!
名前!名前ハ何ダ!】
卵の一匹が私の割烹着の裾を引っ張りながら、そんなことを訊いてきた。
「え?名前?」
忙しいのに。本当騒がしいな。
でもいいか、名前教えるくらい…。
そう軽く判断して、私は名乗ろうとした。
「私、ゆ…………」