アンダーサイカ


“ゆたか”の三文字を言おうとしただけ。


それなのになんで、

向こうで接客してたはずのヨシヤに口を塞がれているのか。



ヨシヤを見る。

顔は笑ってる…けど、目は全然笑ってない。
警戒心というか、もっといえば敵意すらこもっていそう。

意外だった。
「お客様第一」のように振る舞っていたのに、そんな彼がお客にそんな目をするなんて。



「失礼。困ります、お客様。

大事な従業員を“支配”なさろうとされては…。」


―――あ……っ。


ヨシヤの言葉で、私は忘れかけていた大事なことを思い出した。


―――そうだ、“名前の支配”…!


私は自分から名乗ったからヨシヤに支配される形になった。
ということはこのオバケに名乗れば、私はオバケにも支配されることになってしまう。

危ない危ない。うっかりしてた。


…でも卵オバケも、別に悪気があって訊いたわけじゃ………、


< 112 / 506 >

この作品をシェア

pagetop