アンダーサイカ
“ゆたか”の三文字を言おうとしただけ。
それなのになんで、
向こうで接客してたはずのヨシヤに口を塞がれているのか。
ヨシヤを見る。
顔は笑ってる…けど、目は全然笑ってない。
警戒心というか、もっといえば敵意すらこもっていそう。
意外だった。
「お客様第一」のように振る舞っていたのに、そんな彼がお客にそんな目をするなんて。
「失礼。困ります、お客様。
大事な従業員を“支配”なさろうとされては…。」
―――あ……っ。
ヨシヤの言葉で、私は忘れかけていた大事なことを思い出した。
―――そうだ、“名前の支配”…!
私は自分から名乗ったからヨシヤに支配される形になった。
ということはこのオバケに名乗れば、私はオバケにも支配されることになってしまう。
危ない危ない。うっかりしてた。
…でも卵オバケも、別に悪気があって訊いたわけじゃ………、