アンダーサイカ


しかしオバケはとんでもないことを言った。



【バレタ!バレタ!
不覚!不覚!】



「っ!?」


イタズラが見つかった子供のようだった。
卵たちはケラケラ笑いながら、一斉に店の外へ退却していく。


波が引くように黒い群れが散っていくさまは不気味だったけど、私がそれよりも恐ろしく感じたのは、

無邪気に見えた卵たちが、その無邪気さの反面で強(したた)かに、私から名前を聞き出そうとしていたことだ。



お客様だって?とんでもない。
このオバケたちには好意も礼儀もないじゃないか。



「お客様は神様」なんて言葉をよく聞くけど、私に言わせたらこのオバケたちは、

…おおよそ“鬼”に近かった。


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