アンダーサイカ


「抜け毛がひどいのですか。
それはお気の毒に。

では良い育毛薬をご紹介しましょうか。」


【ウム、頼ム。】


ちっちゃいくせに言葉遣いは偉そうだ。

もう頭の上にいるってことを忘れたほうがいいのかな。
半ば諦め気味になってきたけど、お仕事までは諦めない。

ヒヨコの襲来でヨシヤが中断した品出しを代わりに引き継ぐことにした。


段ボールの前にしゃがんだ時、あんなに頭の上を占拠してたヒヨコオバケがコロリと落ちて、段ボール箱の上に綺麗に着地した。

「?」

【娘、名ハ何トイウ?】

ちっちゃい体が偉そうな態度で訊ねた。


でも駄目。その手はもう食わないんだから。
私は手近なメモとペンを取り、まず温泉マークを描いた。
オバケは当然首を傾げる。

そうだろうと思った。

次に田んぼの絵を描き、最後に頑張って蚊の絵を描いた。しましまの脚が特徴なんだよ。


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