アンダーサイカ
お客さんがいなくなって束の間の静けさを取り戻した店内には、ヨシヤと私だけ。
色白の横顔を見上げて私は、少し気まずさを感じてしまった。
理由は単純だ。
さっきヒヨコオバケとの会話で気づいたこと…。
ヨシヤは……―――、
「お客様と楽しそうにお喋りしていましたね。」
「っ!!」
何に驚いたかって、入り口に顔を向けたままの状態でヨシヤが話し掛けてきたことだ。
怒ってるのかと思った。
でも声色は柔らかくて、私を咎めたそうには見えなかった。
だからここは素直に、
「…な、名前を聞かれたからね、暗号使って教えたの。口で言っちゃダメだと思ったから。」
証拠にと、暗号の絵を描いたメモを手渡した。
ヨシヤが目を細めて絵を眺める。まるで我が子の作品を見てるような目をするものだから、私は少し恥ずかしかった…。