アンダーサイカ
瓶をくわえた状態だから話せない。
代わりに、コクンと小さく頷いておいた。
その直後だ。ヨシヤが指先で小瓶を軽く叩く。
「!」
瓶から漏れた一滴の薬が、私の口の中を苦く染めた。
やっぱり苦い。慣れるもんか、こんなの。
八つ当たり気味にヨシヤを睨むけど、逆に彼はとっても…とっても嬉しそう。
だから、
「…………。」
私は何だか怒れなくなっちゃって。
「おやすみなさい、豊花ちゃん。」
くにゃりと歪む視界の中、私は思った。
―――なんだ、やっぱりヨシヤが私を食べるなんて、考えられない。
ヒヨコオバケの言ってた“逃げた人”…。
その人はもしかしたら、“地上人を食べたから”アンダーサイカから逃げ出せたんじゃないか?
だったらたぶん、ヨシヤが私を食べたいのも、アンダーサイカから逃げるため…。
でも、
―――ヨシヤには、きっとできない。優しいもの。
明確な理由はない。けど直感だ。
私は心のどこかで、彼は安全な人だと決定付けていた。