アンダーサイカ



離れた場所から、誰かの震えるような声が聞こえた。

震えるような声で、確かに今、

“稔兄ちゃん”の名前を呼んだ。


「………ッ!?」


反射的にそっちを向く。


たまたまお店の前を通りかかったらしい、背広姿のお兄さん二人が、私のことを凝視していた。

…とても、怯えた目をして。



「…なあ、アレ、…稔…?」

「ば…っ、馬鹿言うなよ…!
いるわけねーだろ。
稔はとっくに………、」


私を指差し、端から見ても動転してるのが分かるくらい怯えて。

私は潤ちゃんをその場に残し、吸い寄せられるように…お兄さんたちのほうに駆け出した。



「ちょっと、豊花…!?」


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