アンダーサイカ
「…ただいまぁ。」
誰もいない家に帰ってくるのは久しぶりな気がする。
暗くて、がらんとして、私一人が世界に取り残された気分だ。
それにしても、鍵を持ってて良かった。
いつもならお母さんが家にいるから必要ないんだけど、今日に限って私は鍵を持ち歩いていた。
まさか帰宅直前に親が出掛けるなんて思いもしなかったけど。
ひょっこりと台所を覗く。
ピカピカのシンク。綺麗なレンジ。静かな炊飯器。
…ご飯の用意は、残念ながらまだみたい。
すると余計に「くうぅう…」と私のお腹がSOSしてくる。
そんなこと言ったって…。
お母さんは冷凍食品もインスタントも嫌い。だからこの家にあるのは野菜や肉なんかの材料だけ。
…不器用な私が作れるものといったら、いびつなおにぎりくらい。
万事休すとはまさにこのこと。