アンダーサイカ
私はこの時ほど、はっきり“目眩”というものを覚えたことはなかった。
潤ちゃんの指し示すところには確かに“西城 稔”の名前があって、
自殺した年も、稔兄ちゃんが死んだ頃と見事にかぶっていた。
「…………冗談だよね?」
とても冗談なんかじゃない。けど認めたくない。
潤ちゃんも、私が何に動揺してるのかを一拍遅れて理解して、
「……………っ、」
言葉を詰まらせる。
「…な、なあ、別人じゃねえの?ミノルなんて、よくある名前だろ?」
拓くんも稔兄ちゃんの名前だけは知ってるから、状況を早く理解してくれた。
…でも、
「…西城(にしじろ)って苗字、珍しいの。
これ、間違いないよ………。
稔兄ちゃんだ………。」