アンダーサイカ
人間何が大切って、やっぱり“慣れ”だと思うわけ。
私は割烹着を着た直後にもう、
「今日は何したらいいの?」
ヨシヤからのお仕事の指示を待つんだから。
いつもオバケたちが来るのは深夜1時近く。今はまだその時間じゃない。だから訊いてみた。
ヨシヤは「待ってました」とばかりに、閉め切られた引き戸へ小走りで近づいて、それを一気に左右に開いた。
「!?」
そこに見えるのは……薄暗くて何も無い通路。
ヨシヤは一体何を見せたいんだろう。
そんな首を傾げる私はひとまず放置して、彼はキョロキョロと通路を見回す。
「ちょっと待って下さいね。そろそろ来るはずですから。」
「誰が?」
そう聞き返した私の耳に、微かな「タッタッタ…」という走る足音が聴こえてくる。