アンダーサイカ
今手掛けてる調剤を終えると、「お茶でも飲んで休憩しましょう」と嬉しい提案をしてくれた。
素直に彼の後に続き、昨日すき焼きを食べた居間に向かう。
「すみませんね、実はあまり種類がなくて…。プーアル茶とビワ茶どっちがいいですか?」
「マニアックだね。」
飲んだことの無いビワ茶を頼む。
少しして、煎れたてのお茶が注がれた湯呑みが出てきた。
私はビワ茶を、ヨシヤはプーアル茶を一口飲んで、
「ほぅ…。」
と、どちらともなく、そんなおかしな溜め息をついた。
「まだお客様が来るには時間がありますね。
そうだ、ひとまず配達員さんに電話をかけておきましょう。
完成したものからパパッと配ってもらわないと。」
一人で悩み、一人で解決してしまった。
ヨシヤは居間の隅の黒電話を手繰りよせて、ダイヤルをくるくる回し始めた。
私は黒電話自体見るのが初めてだ。興味深くて、遠目からまじまじとその様子を観察していた。