アンダーサイカ


今手掛けてる調剤を終えると、「お茶でも飲んで休憩しましょう」と嬉しい提案をしてくれた。

素直に彼の後に続き、昨日すき焼きを食べた居間に向かう。


「すみませんね、実はあまり種類がなくて…。プーアル茶とビワ茶どっちがいいですか?」

「マニアックだね。」


飲んだことの無いビワ茶を頼む。

少しして、煎れたてのお茶が注がれた湯呑みが出てきた。



私はビワ茶を、ヨシヤはプーアル茶を一口飲んで、

「ほぅ…。」

と、どちらともなく、そんなおかしな溜め息をついた。



「まだお客様が来るには時間がありますね。

そうだ、ひとまず配達員さんに電話をかけておきましょう。
完成したものからパパッと配ってもらわないと。」


一人で悩み、一人で解決してしまった。


ヨシヤは居間の隅の黒電話を手繰りよせて、ダイヤルをくるくる回し始めた。

私は黒電話自体見るのが初めてだ。興味深くて、遠目からまじまじとその様子を観察していた。


< 311 / 506 >

この作品をシェア

pagetop